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<中国高速鉄道事故>変化する中国メディア…党の報道指針に反発
2011年08月01日
香港のメディア関係者が温州での高速鉄道事故と関連して中国メディアに下された中国共産党の報道指針に正面から反発している。英字紙サウスチャイナモーニングポストは31日、「香港記者協会が共産党の高速鉄道事故縮小報道を指示する報道指針に対し反対する声明を出した」と伝えた。記者協会は声明で、共産党中央宣伝部は報道統制を撤回し記者らに報復しないと約束しなければなければならないと明らかにした。
記者協会は、「われわれは香港につながる大陸の高速鉄道でこのような惨事が再発しないようにするため香港と外国の読者に真実を知らせることを促す」と強調した。1997年7月の1国2制度実施以来、多くの中国当局からの干渉と統制を受けてきた香港メディア界で共産党最高機関である中央宣伝部の指針を正面から否定したのは極めて異例なことだ。
中央宣伝部は先月29日、「鉄道事故後、中国内外の世論情緒が複雑になっている。新聞・雑誌・ニュースサイトなど各媒体は落ち着いて事件を報道しなければならない」と報道指針を下した。
香港メディアだけではない。報道指針が下されたにもかかわらず一部本土メディアは相変らず関連報道を出し続けている。経済専門紙の経済観察報と中国経営報・新快報・南方都市報などは特集版を出して鉄道省を解剖する記事を載せた。
これまで中央宣伝部と政府当局に手なずけられてきた中国メディアが高速鉄道事故を契機に声を上げており注目される。腐敗と特権の伏魔殿とされる鉄道省の専横が事件の主要因として浮上すると、メディアの牽制を受けない権力は腐敗するものだという認識が広がり始めた。
これに先立ち中国国営中央放送のある記者は、現場を訪れた温家宝首相の面前で、「惨事から数日で事故現場を片づけてしまうなら調査結果の透明性をどのように期待できるか」と鋭く言い放ったりもした。
中国版ツイッターの微博を通じ事故関連の知らせが伝わると報道統制も実効力を得られなかった。事故当日の先月23日、中国の放送局は高速鉄道事故のニュースをまともに伝えていなかった。微博にリアルタイムで事故のニュースが伝えられ関連の書き込みが2600万件も上がってくる間に中国の宣伝媒体は官営の立場を載せただけだった。 .
☆
■「和諧社会」の崩壊
中国のパクリ新幹線事故は、停止すると爆発する暴走列車の事故を連想させた。
バブル崩壊に向かって暴走する現在の中国の経済を連想したからだ。そして破損した車両に書かれた「和諧号」の文字は胡錦濤国家主席が唱えた「和諧社会」の崩壊をも連想させた。
胡錦濤主席は、首相に指名した温家宝氏とともに「和諧社会」というスローガンを掲げて格差の是正に努めた。
1990年代以降、中国社会では改革開放政策に起因する経済的な地域格差の拡大、また貧富の差の拡大などの矛盾が表面化し始め、それが官僚の腐敗、民族対立などと相まってデモ・暴動・騒乱が増加していたためである。
胡錦濤氏が国家主席になってからも大規模な暴動が度々報じられるようになり、2004年10月末に発生した四川省の暴動は、建国以来最大規模のものとなった。
そのため、「和諧社会」は、掛け声だけといわれ今年7月1日の中国共産党90周年式典は、共産党自らが腐敗の存在を認めざるを得ない程中国社会の腐敗は政府の中枢部に入り込んでいた。
共産党が腐敗の存在を認めその撲滅声明を発したのは、腐敗さえ撲滅すれば「和諧社会」は成功裡に推移していると世界に訴えたかったのだろう。
これに対し当日記は、政府そのものが腐敗しきっている中国から腐敗を撲滅するためには、中国政府そのものを撲滅せねばならぬと書いた。
「和諧社会」の象徴とも言えるパクリ新幹線を予定より前倒しで6月30日に開業させたのは、7月1日の共産党式典に間に合わせ、世界に中国の威信を示すためであった。
ところが「和諧社会」のシンボルであるパクリ新幹線は、わずか開業一ヶ月足らずで、暴走の果てに追突し、自壊してしまった。
瓦礫と化した車両の残骸に書かれた「和諧号」の文字が、胡錦濤主席が唱えた「和諧社会」の終焉と重なって見えた。
この事故により、これまで中国社会の地下に封じ込められていたマグマのような矛盾が一挙に噴き出し、温首相が現場に赴き、必死で国民の怒りを「鉄道省」に向け、政府に対する批判を交わそうとした。トカゲの尻尾切りである。
■政府の統制を超えたネットの普及
だが急速なネットの普及は、中国政府そのものをを変化させる予感さえ与える。
まず注目すべきは従来のように情報統制ができなくなってきたことだ。 事故の様子、さらに遺族が抗議する姿がネットに流れ、政府の事故対応、また安全を二の次にしたパクリ新幹線への不信感や批判の声が広がって行った。
重要なことは従来政府のコントロールの下で形成された世論が、もはや政府の統制が効かない世論に変化したことである。
その世論を後押ししたのがネットであり、ネット主導の中国の国内メディアの反乱が起きつつある。
政府による情報統制の実態まで報道されたことは、これまでの中国では例のなかったことである。
「中国ジャスミン革命」といわれる所以である。
ネットの普及は天安門時代とは大きな状況変化を起こしている。
天安門事件のように、市民が抗議する現場を戦車で踏み潰し、共産主義の危機を押さえつけたら、そのシーンは一瞬にしてネットを駆け巡り世界中の批判を受けることになる。
■中国経済は国家ぐるみのマルチ商法か
もうひとつこの事故で国民の目の前に晒されたのが中国経済の暴走である。
日本には「進まなければ倒れる経営」を自転車操業と例えるが、中国経済の現状はそんな悠長なものではない。
崩壊に向って爆走するパクリ新幹線そのものである。
破綻を前提とした経営に「マルチ商法」あるいは「ネズミ講式経営」があるが、これらは加入者が永久的に増え続けることを前提に投資を求める。
加入者(投資家)が増え続ける限り破綻しないと喧伝するが、その破綻は当初から運命付けられている。
中国の経済成長は、投資が永久的に続くと目論んでいる点で国家ぐるみのネズミ講式経済成長ということが出来る。
中国は公共投資で高い経済成長を維持してきたが、地方政府の債務は増え続けている。 その債務返済のためには、高い経済成長率を維持し税収を増やなければならない。
地方政府の債務は中国国内の金融機関からの債務である。 だが、高い成長率の維持は急速なバブルの崩壊をきたす。 これは日本のバブル崩壊の例で明らかである。
バブル崩壊により税収増による返済ができなくなれば、中国の金融機関は多額の不良債権を背負うことになる。 それが不良債権による金融危機に発展するのも日本の例のとおりである。
現在の中国経済の成長は、経済が成長し続けると人びとが信じている間は成立する。
だがバブルは、参入者(投資家)が投資に疑問を持った瞬間に崩壊が始まる。
今回のパクリ新幹線の事故は、投資家に公共事業への疑問を投げかけた。
パクリ新幹線への国民の不信感は、いまや政府が抑えられない状況に発展し、中国経済のバブル崩壊の引き金になりかねない。
胡錦主席が唱えた「和諧社会」の実現は、今回の中国の「和諧号」事故の衝撃で夢と砕け散ってしまった。
■政府対ネット、生き残りを賭けた死闘!
中国が今足を踏み入れつつある社会は、政治的には世論をコントロールが出来ない社会、経済的にはバブル崩壊へ、と急激な変化を余儀なくされている。
新しい中国が、ネットによる「ジャスミン革命」の中から生まれてくるのは興味深いところである。
その一方で、ネットの批判で追い詰められた中国政府当局は、共産主義による一党独裁を死守するため、本格的な言論統制を開始してている。
7月30日を境に大手全国紙では、パクリ新幹線事故の記事は他の記事に差し替えられ、中国の紙面上からは完全に抹殺された。
国営の新華社通信の記事を報道せよという通達を受けたというのだ。
しかし、政府が報道規制する通達が、そのまま記者の怒りとなって、ネットの掲示板や微博(中国のTwitter)などへぶつけられているのが現在の中国の状況である。
そして出回ったネット情報が有力紙を勇気付ける。
【香港=槙野健】中国広東省の有力紙「南方都市報」は7月31日、高速鉄道事故を巡る当局のメディア規制に抗議して「こうした痛ましい出来事と鉄道省のお粗末な処理に対して思いつく言葉は――『くそったれ』しかない」と罵倒する記事を掲載し、インターネットで話題になっている。
経済誌「財経」はウェブサイト上で、「メディアや民衆が政府をののしることができてこそ、希望のある国家だ」と南方都市報を支持。「不屈の精神を持つ記者がいると証明した」との称賛の声も相次いでいる。
(2011年8月1日21時50分 読売新聞)
中国では、今ジャスミン革命が進行である。
そう、ジャスミン茶は中国が本場である。
参考:
こんな事実がネット上で公開されると公共投資への不信感はさらに増大し、バブル崩壊に拍車が掛かる。
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