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再論・集団自決、『鉄の暴風』の取材背景 梅澤隊長“生死”の誤記 

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昨日(7日)から上原正稔さんの連載企画「歪められた沖縄戦史」が世界日報に掲載された。

本文は新聞でご覧頂くとして、見出しを紹介しよう。

慶良間諸島「集団自決」の真相

隠蔽された『鉄の暴風』の誤報

「梅澤少佐の不明死」

 

以下は過去ブログ『鉄の暴風』の取材背景 梅澤隊長“生死”の誤記 2009-01-22、の引用を編集した記事です。               ★ 「鉄の暴風 沖縄タイムス」の画像検索結果

一昨日のエントリーで『鉄の暴風』の執筆者・太田良博記者の「誤記」の弁明について書いた。

その弁明記事を全文紹介して欲しいとの読者の要望があったので、沖縄タイムスの該当部分を抜粋引用する。

 

沖縄タイムス 1986年8月15日「文化面」

『鉄の暴風』の取材背景

戦後四十一年にあたって

梅澤隊長“生死”の誤記 - 太田良博

「解せぬ真相表明の遅れ」

(略)

その慶良間の戦闘だが、『鉄の暴風』のなかの座間味の戦記で、同島の隊長であった梅澤少佐に関する部分には誤記があった。 「不明死を遂げたと記録された、その梅澤元少佐が、現に生存していることが、あとでわかったのである。 『鉄の暴風』のその部分(同書四十一ページ末尾)は、1980年7月15日刊行の第九版から削除してあるが、その誤記の責任者は、じつは、当時、沖縄タイムスの記者であった、この私である。 ここで、梅沢氏と沖縄タイムス社には深く詫びるほかはない。しかし、あの誤記は、故意によるもの、あるいはネツ造によるものではない。 そのことは、自分の良心にちかって言える。 あれは座間味の戦争体験者の座談会をそのまま記録したものであって、梅沢隊長の消息については、あの「誤記」のような説明を私はうけたのである。 正直なところ、梅沢隊長が降伏したことを島の人たちは知らなかったらしい。 ただ、「誤記」のようなウワサがあったようである。あの小さな島で、しかも、当時、一番重要であった人物が、その後どうなったかも知らないほど、島の人たちはすべての情報から遮断され、孤立した状況のなかにおかれていたことがわかる。 『鉄の暴風』執筆当時、私としては、島の人たちでさえ知りえなかった事実をさぐり出すほどの余裕は、当時の私にはなかったのである。「生きている」のに「死んだ」と報じられたことを梅沢氏は抗議しているようだが、「おれは死んではいない」「投降したのだ、そしてこの通り生きているではないか」という意味の抗議なのだろうか。
それにしても、と私は思う。 というのは『鉄の暴風』の初版が出されたのは1950年の6月15日である。 あれから三十余年間、タイムスが自主的に「誤記」の部分を削除するまで、梅沢氏は自分の所在さえ知らせていないようだし、「誤記」訂正の申し入れもしていないという。 
『鉄の暴風』の版元が自ら削除してから6年も過ぎて、なぜいまごろから「真相」を明かすのだろうか。 その辺の梅沢氏の心情は不可解というしかない。(略)(沖縄タイムス 1986年8月15日)

                    ◇

人の生死に関わる誤記をしておきながら、随分と逆切れした弁明ではないか。

何よりも「梅澤隊長“生死”の誤記」とカッコつきで「誤記」としているが、この弁明文には肝心の「誤記」の原文は書かかれていない。

『鉄の暴風』の原文にはこう「誤記」されている。

<梅澤少佐のごときは、のちに朝鮮人慰安婦らしきもの二人と不明死を遂げたことが判明した>

このデタラメ記事を書いたことを太田良博氏は次のように弁明している。

>あれは座間味の戦争体験者の座談会をそのまま記録したものであって、梅沢隊長の消息については、あの「誤記」のような説明を私はうけたのである。 

>正直なところ、梅沢隊長が降伏したことを島の人たちは知らなかったらしい。 ただ、「誤記」のようなウワサがあったようである。

 

ならば、「~の噂があった」と書くべきであり、「~判明した」などと書くべきではない。

 

それにしてもただのウワサだけをネタにして、「朝鮮人慰安婦と不明死」とよくも想像力たくましく書けたものだ。

それも新聞社が発刊するドキュメント戦記と銘打っているのだから呆れて言葉を失う。

さらに言わしてもらうと、単に「不明死」と誤記しただけならまだ単純ミスと譲歩もしよう。

だが、「梅澤少佐のごとき」とか、「朝鮮人慰安婦と・・」とか、悪意に満ちた不必要な表現は一体何だ。

これでは戦記というよりまるで個人攻撃の怪文書ではないか。

このようなウワサ話の集大成が『鉄の暴風』ではないのか。

>あの小さな島で、しかも、当時、一番重要であった人物が、その後どうなったかも知らないほど、島の人たちはすべての情報から遮断され、孤立した状況のなかにおかれていたことがわかる。

すべての情報から遮断された状態で『鉄の暴風』を書き上げたということは、その内容の真実性は筆者は責任を負わないということに他ならない。

ということは、『鉄の暴風』の内容は米軍が一方的に持ち込んだ情報やウワサ話の類がそのすべてであったということを証明している。

>『鉄の暴風』執筆当時、私としては、島の人たちでさえ知りえなかった事実をさぐり出すほどの余裕は、当時の私にはなかったのである。

まさに、語るに落ちるとはこのことだ。

太田記者が『鉄の暴風』を書いた姿勢がこの一文に現れているではないか。

執筆当時の太田記者は事実を探り出す余裕はなかったのだ。

それでは太田記者は一体何ゆえ事実を探り出す余裕がなかったのか。

豊平、牧港のベテラン両記者をさし置いて、ろくに記者としてのトレーニングも受けないままに『鉄の暴風』の執筆を委ねられた新米記者の太田氏には、事実を探り出す経験も素養もなく、記者としての基礎トレーニングさえ受けていないのだから、勿論余裕なんて持ち合わせていなかったのだ。

>「生きている」のに「死んだ」と報じられたことを梅沢氏は抗議しているようだが、「おれは死んではいない」「投降したのだ、そしてこの通り生きているではないか」という意味の抗議なのだろうか。

あのような侮辱的な「作文(誤記)」をされたら誰だって抗議をするのが当然でああろう。

「梅澤氏と沖縄タイムス社には深く詫びるほかはない」と、ふてくされたように一応侘びてはいる。

だが、太田氏は梅澤氏に抗議されたこと自体が気に食わないようだ。

それに太田氏が沖縄タイムスに詫びるより、沖縄タイムスと太田氏が連名で梅澤氏に詫びるのが本筋ではないか。


>それにしても、と私は思う。 というのは『鉄の暴風』の初版が出されたのは1950年の6月15日である。 あれから三十余年間、タイムスが自主的に「誤記」の部分を削除するまで、梅沢氏は自分の所在さえ知らせていないようだし、「誤記」訂正の申し入れもしていないという。

太田氏が梅澤氏に取材していたのならともかく、自分の知らない間にウワサで記事を書かれ出版されているのだ。

梅澤氏が太田氏に自分の所在を知らせることなどあるはずはないではないか。


>『鉄の暴風』の版元が自ら削除してから6年も過ぎて、なぜいまごろから「真相」を明かすのだろうか。 その辺の梅沢氏の心情は不可解というしかない。

梅澤氏が「真相」を明かすということに逆切れする太田氏の心境こそ不可解ではないか。

ということは、『鉄の暴風』では「真相」は明かされないまま放置されていると言いたいのか。

一々細部を取り上げるまでもなく、太田良博氏は逆切れした結果、「『鉄の暴風』の取材背景」について意外と正直に告白してしまっている。

「戦後四十一年にあたって」というタイトルで気が緩んだのか、取材というよりウワサ話をかき集めて書いた吐露しており、

「事実をさぐり出すほどの余裕は、当時の私にはなかったのである」と完全に『鉄の暴風』がデタラメだったと著者自ら語っているではないか。

著者も認めるデタラメな『鉄の暴風』を、資料的価値があると認識して下した大阪地裁判決やその事実認定を引き継いだ高裁判決がいかに事実とかけ離れたものであるか自明である。

【付記】1:35

『鉄の暴風』から梅澤氏の「不明死」を削除した1980年7月15日発行の同書には「重版に際して」と題して、次のような沖縄タイムスの弁明が載っているが、梅澤氏に対する一言の謝罪も述べられていない。

<・・・戦後三十年余年の歳月を経過するなかで、沖縄戦に関する新しい事実の発見や資料の発掘もすすんでおります。 しかし、第二版刊行の際に削除した数行の字句および、今回、明らかな事実の誤り訂正したほかは、すべて初版のとおりにしました。・・・1980年7月1日 沖縄タイムス>

たったこれだけの「誤記」削除の告知で、三十余年も梅澤氏を侮辱した本を発売し続けた弁明に変えているのだ。

一行の謝罪もなく。

それはともかく、「今回、明らかな事実の誤り訂正したほかは、すべて初版のとおりにしました」というが、これが事実なら『鉄の暴風」の「不明死」を削除したほかの部分は、すべては初版のとおりの「ウワサ話の集大成」だということになる。

 

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