よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします
※お願い
人気ブログランキングの投票が分散されるのを防ぐため、次のバナーをクリックをお願いします。 よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)7月13日(月曜日)
通算第4598号 <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いまさらどんな手を打っても「もう遅い」って。
上海株は大暴落の秒読みに入ったと判断できる。
****************************************
上海株式市場で大暴落が始まった。拙著『中国バブル崩壊が始まった』(海竜社)などで予測してきた通りである。
中国の金融証券当局は利下げ、預金準備率引き下げ、IPO(株式新規公開)の中断、株購入資金借り入れ条件の緩和など一連の手をうち、それでも効き目がないとみるや、事実上の空売り禁止(「悪意ある空売りは捜査する」といって当局が数社を手入れ)、あまつさえ1400社もの大型株銘柄の取引停止(これは事実上、「市場の死」を意味する)など荒技に出た。
なるほど、実質的な株式売買が市場では行われない中で、意図的に特定の銘柄だけ株価をかさ上げして市場操作をした。このため7月10日の上海株はすこし持ち直したが、手口は見え見えである。
ウォールストリートジャーナルは、「中国の株価安定策、失敗した5つの理由」を次のようにあげた(2015年07月10日)。
第一に「インデックス先物対策の失敗」である。
しかしヘッジ・ファンドは先を争って株式を売却した(この場合のヘッジ・ファンドとは欧米勢ではなく、香港を拠点に太子党の子弟達が運営するファンドを意味する。江沢民の孫、李源潮の女婿、温家宝の息子等、米国帰りが欧米の禿鷹ファンドなどと組んでいることもある)。
『紅二代』というより、『官二代』という党高官の子弟が多いのが特徴的で、多くが欧米で経済学、新資本主義を学んで帰国したのである。
第二に不十分な資金が問題である。
中国証券金融が安定基金として存在してはいるが、その元手はわずか1000億元(約2兆円)で一日の売買高の10分の1でしかない。もっと不退転の決意で市場に介入しないと手遅れになることは火を見るよりも明らかだろう。
当局は証券会社に「売却を急がないよう」と求めたが、自己犠牲をしてまで当局の要求にまじめに応えるファンドマネジャーはいない。
第三には数々の不適切な対策である。
とくに取引の値幅が比較的安定した大型株を取引停止にしたため、ボラタリティ(乱高下幅)の激しい小型株が売り浴びせられた。投資人口が二億人、80%が個人投資家という中国的特徴を持つ上海市場ならではの現象とも言える。
第四は「売買停止」が市場に「仮死状態」を強いたことである。
第五に金融政策のリーダーの姿が見えず、救済策の策定を証券規制当局に任せていることだ。周小川も金立群もどこへ行ったのだ?
しかしウォールストリートジャーナルの指摘を待つまでもなく、金融当局は共産党トップの顔色を見て政策を決める上、自分たちが責められないために「これはファンドマネジャーが悪い」、そして「海外投機筋の陰謀だ」とするのである。
だが「外国資本による中国株の空売りが市場の急落を招いた」などとする海外陰謀論は成立しない。
なぜなら海外投資家の株式保有総額は全体の2%未満でしかなく、建前上、海外投資家も上海と香港市場の相互取引を通してのみ中国の個別銘柄の「空売り」ができるようになったが、「ネイキッド・ショート・セリング」(取引の裏付けとなる株式を確保せずに行う空売り)は禁止されている。
つまり海外ファンドの空売りは行われていなかったのである。
▲残された手だては二つしかない
大暴落は秒読みだが、中国に残された手段はあるだろうか? 可能性は二つあるように見える。
第一は市場の閉鎖である。
一ヶ月ほど思い切って株式市場を閉鎖すれば、この間に様々な処理が出来るだろう。
なにしろ一党独裁の国ならば、この緊急事態を乗り切る強引な手段も、予測可能である。
第二は、通貨の切り下げである。
つまり人民元は完全な変動相場制への移行が難しいうえ、ドルベッグ体制となっているため、対ドル相場を、30%程度切り下げるのである。
「そんな乱暴な」と思われる向きもあるかも知れないが、実際に中国は1993年にいきなり30%、通貨切り下げを行った『実績』がある。
これにより輸出競争力が回復でき、若干の海外企業の直接投資も復活する可能性がある。
デメリットは石油、ガス、鉄鉱石など輸入代金が跳ね上がること、もうひとつは日本に観光旅行へくる中国人の「爆買い」ツアーが激減することだろう。
というより現在の爆買いツアーは、もうおしまいに近く、中国人の発狂的海外ツアーも沙汰止みになるだろう。
かくして中国の発狂的投機の時代は終わりを告げる。
□○◎ ◇◎ △○□ □○ ○○○ ○○
上海株式市場は10日午前も前日に続き大幅高となったが、強権的な株価維持策で中国市場のゆがんだ実態が白日の下にさらされ、習近平政権が失った信頼は計り知れない。取引停止中の銘柄が“時限爆弾”となり、暴落モードが長期化するとの見方もあるなか、アジアインフラ投資銀行(AIIB)で存在感を高め、人民元を国際通貨化として認めさせようという習政権の野望も、株バブルとともに崩壊寸前だ。
上海総合指数は9日に5・8%高の上昇となり、10日午前も一時6%を超える大幅高で推移した。
上昇の背景には当局の介入があった。9日には公安当局の幹部が証券当局に乗り込んだ。新華社電によると、中国公安省の孟慶豊(もう・けいほう)次官が調査チームを率いて中国証券監督管理委員会に出向き、同委員会と合同で「悪意のある」空売りに関して捜査することを決定。違法行為に対して厳罰で臨む姿勢を示した。
当局のコワモテもあってか、市場は反発したが、実際には上海証券取引所のショートポジション(売り持ち)はごくわずかで、ブルームバーグは「間違った犯人捜しに当局躍起か」と冷ややかだ。
国有資産監督管理委員会は9日、地方当局に対し、管轄の国有企業が上場企業の株式を買い増した状況を毎日報告するよう求める通達を出した。株を買わない国有企業を浮き彫りにする狙いで、事実上国有企業に買い増しを迫った。
当局は株価維持になりふり構わないが、市場に下げ止まり感はみられない。9日には上海と深●(=土へんに川)の両市場で全体の半数を超える約1600銘柄が取引を停止、「潜在的な売り圧力を抱えており、取引が再開されれば売り浴びせを受ける」(銀行系証券)と警戒する。
共産党中央宣伝部は国内の報道機関に「株式市場の問題が政治化するのを回避し、(批判の)矛先が共産党や政府に向かうのを防げ」と指示する緊急通達を出した。
通達は(1)株式市場と政治を関連付けるな(2)株価の上昇や下落を冷静に、客観的に報道せよ(3)株価の動向を投資家が理性的に受け止めるよう世論を導け(4)誇張せず、評論記事は慎重に発表せよ(5)経済政策の成果を宣伝し、中国経済の先行きを前向きに伝えよ-などと指示している。
ただ、投資家が冷静さを失うほど投機をあおったのは習政権自身だ。
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は「不動産バブル崩壊を受けて、人民日報などが株式投資をあおった責任が重い。中国政府は間違った政策を、別の間違った政策でカバーしようとしているが、中国経済の基盤が変わらないので、政策失敗による損失は拡大していく」とみる。
損失を被った個人投資家の政府への不信感がくすぶるなか、社会秩序の動揺が現実味を帯びてきた。証券監督管理委員会前では8日、株取引で数千万円を失った投資家らが特定の企業の名前を書いた紙を掲げ、株価暴落への不満を口々に訴えた。150万元(約3000万円)損したという女性(53)は「私たちの損害の責任追及を政府にしてもらいたい」と訴えた。インターネット上では「(政府に)だまされた」との書き込みも相次いだ。
標準的な市場経済と大きくかけ離れた中国当局の姿勢が明るみに出たことは、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立や現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」などの政策を打ち出し、国際金融の世界で存在感を示そうとしている習政権にとって大きな痛手だ。
人民元をドル、ユーロに続く国際通貨にするという野望の実現も遠のきそうだ。ブルームバーグによると、野村ホールディングスの中国担当チーフエコノミストは、株価暴落を受けて、政策当局者が海外への市場開放に及び腰になる公算が大きいと指摘した。株価急落に見舞われている中国が資本自由化のペースを緩めれば、国際通貨基金(IMF)が今年行う特別引き出し権(SDR=IMF加盟国が資金を引き出す権利)の通貨バスケット見直しで人民元が採用される可能性が低下するという。
前出の勝又氏は警鐘を鳴らす。
「“社会主義市場経済”なるものを掲げて、国家があらゆる面で経済活動へ干渉する中国のやり方は、世界共通のルールから著しく逸脱している。世界の金融市場関係者は習政権の政策マネジメント能力に疑問を持っており、市場リスクの主役はギリシャから完全に中国に移っている」
よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします