◆個人攻撃の異論封じ
テレビに「秘密のケンミン・ショー」というバラエティー番組がある。その地方だけの行事や習慣を紹介する企画で、なぜだか大阪がよく登場する。マイクを向けると、ノリよく喋(しゃべ)ってくれ、話が盛り上がるからか。
自民党若手議員の勉強会での「沖縄発言」が問題にされた作家の百田尚樹氏のフェイスブックを読んで、思わずこの番組が浮かんだ。新聞紙上では「沖縄の尊厳・報道の自由を威圧」(朝日27日付)、「言論統制の危険な風潮」(毎日27日付社説)と大騒ぎだが、氏によると、そんな大げさな話ではない。
講演後の質疑応答という雑談で、誰かが「沖縄の二紙はやっかいですね」と言った言葉を受けて、「ほんまや、つぶれたらいいのに」と軽口で言ったにすぎない。部屋の中は笑いが起こり、その話題はそれっきりで、すぐに別の話題に移ったという(産経27日付ネット版)。
さすがに大阪出身の百田氏、ノリよく「ほんまやー」と笑いを誘った。出席議員は「百田さんの話がめちゃくちゃ面白かったから、居酒屋トークみたいになっちゃったんだよ」と述べている(朝日27日付)。
会合は私的なもので、非公開だった。百田氏はNHK経営委員を退任しており、一私人だ。言論をとやかく言われる立場にない。にもかかわらず、朝日26日付夕刊は1面肩で、「百田氏『沖縄2紙つぶせ』 自民勉強会で発言」と、百田氏に矛先を向けた。露骨な個人攻撃の異論封じだ。
◆真実伝えぬ沖縄2紙それほど百田氏の沖縄発言は問題か。誤解を招く表現もあるが、事実を突いており、問題ありとは思われない。例えば、次の発言。「左翼は沖縄に基地があるから、米兵が沖縄の女の子を強姦(ごうかん)すると批判するが、データ的にいうとひどいウソだ。米兵が犯したレイプ犯罪よりも、沖縄県全体で沖縄人自身が起こしたレイプ犯罪の方が、はるかに率が高い」
その通りだ。2011年のデータ(沖縄県警「子ども・女性安全対策係」12年4月)によれば、米軍関係者による強姦・強制わいせつ事件は1年に1回あるかどうかだが、県民は毎週1、2件起こす。
ところが、沖縄タイムスは不良中学生の売春まで米兵による「強姦事件」に加え(12年10月17日付)、琉球新報は「女性は安心して道を歩けない。米兵は沖縄を無法地帯と考えているのか」(同18日付社説)と強弁する。
普天間基地について百田氏は、「もともと普天間基地は田んぼの中にあった。周りに何もない。基地の周りが商売になるということで、みんな住みだし、今や街の真ん中に基地がある…基地の地主たちは大金持ち」と語る。みんなと言うのは言いすぎだが、そうした側面は実際ある。
地元紙は普天間飛行場が「世界一危険」な象徴として基地隣接の普天間第二小学校を挙げるが、創立は1969年で、すでに飛行場が存在した。土地代が安かったので革新市長がフェンス沿いに作った。同じ理由で住宅や保育所、病院も建った。普天間飛行場の地主で、年間地料が1000万円以上の人は約80人いるから、「大金持ち」もいる。
こんな具合に百田発言は特段、問題視することもない。ところが、2紙は共同抗議声明を発表し、「政権の意に沿わない報道は許さないという“言論弾圧”の発想そのもの」と断じている。
◆虚偽報道隠蔽も同然この批判は筋違いだ。百田氏は「政権の意に沿わない報道」ではなく、真実を伝えない報道姿勢を指弾している。それを言論弾圧にすり替えるのは虚偽報道の隠蔽に等しい。沖縄では不偏不党・公正な報道が存在しないのに堂々とまかり通る。とすれば、これこそ「秘密のケンミン・ショー」ものだ。
それにしても非公開の会合がなぜリークしたのか。百田氏は言う、「部屋から退出しても一部の記者はドアのガラスに耳をくっつけて、盗み聞きしていたのだ。部屋の内側からガラスに耳がくっついているのが見えたときは笑ってしまった」
「壁に耳あり、障子に目あり」。そんな暗黒社会をつくるなと左派メディアは通信傍受法や共謀罪に猛反対した。それが盗み聞きして異論つぶしだ。これは立派な暗黒社会だ。
(増 記代司)
よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします