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沖縄2紙と翁長知事の異様

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沖縄2紙と翁長知事の異様  Viewpoint 6月4日

OKINAWA政治大学校名誉教授 西田 健次郎

辺野古反対なら無批判

県民の「知る権利」に応えず

 琉球新報、沖縄タイムス両紙を主軸とする沖縄のメディアは連日、「辺野古(へのこ)基地反対」の大合唱を流している。曲がりなりにも掲げていた「不偏不党」「公正中立」というメディアの建前(本旨)は総崩れ状態だ。日本共産党など特定左翼政党の宣伝機関紙以上に過激な見出しが並び、基地反対一色の紙面構成である。

 翁長(おなが)雄志(たけし)沖縄県知事が訪米直訴に出発した5月27日前日の紙面(26日)、新報・タイムス両紙は翁長知事と共同通信のインタビュー記事を1面トップで飾った。記事の主要部分は、知事の私的な諮問機関と位置づける「第三者(検証)委員会」が、前県政が決定した辺野古沿岸埋め立て承認に対し、「承認を取り消す」と提言をした場合は「(提言に沿って)取り消すことになる」というところ。また、辺野古移設を阻止する知事権限が「10ある」と述べている。

 専門家6名からなる第三者委員会の異常な密室体質=非公開性、不透明性については先に本欄で取り上げたが、翁長知事の発言は自らの判断を棚上げして、第三者委員会にすべてのゲタを預けたばかりか、委員会の結論に予断を与えたように聞こえる。

 今年1月に設置された同委員会の結論は「今年の7月上旬ごろ」(県議会関係者)とされ、翁長知事は当初、「委員会の結論を参考にして取り消しの可否を判断したい」としていた。それがここにきて委員会提言がすべて、と態度変更しているように思える。

 県政の最重要案件に関する決定責任を突如、密室委員会に転嫁したとも受け取れる姿勢は、行政の最高責任者としてはまさしく無責任のそしりを免れない。

 万が一にも「埋め立て承認に法的瑕疵(かし)はない」と委員会が結論づけたらどうなるか。知事のインタビュー発言は、見方によっては自己判断の「逃げ場」づくりになりかねず、危うい政治、行政手法といえないか。もともと、ことばの巧みな言い回しは、翁長知事の得意とする論法と承知している。米国訪問に向けたパフォーマンスにしては、県民各層に疑念を拡散させる「変節発言」になりかねない。ことばの言い回しよりもズバリ、合理的判断を求める気質の米国で、同知事の手法がどの程度通用したのだろうか。

 「変節」といえば、週刊文春が4月23日号から5週連続で「新聞・テレビが目を背ける沖縄のタブー」と題して、翁長知事関連と沖縄問題の総力特集記事を掲載している。5週連続で沖縄特集を組む週刊誌は例を知らない。この中で、5月7日・14日特大号(合併号)は「沖縄翁長知事の変節」を取り上げた。

 総力特集第3弾と銘打たれた中身は▽「『基地反対闘争はマスターベーション』発言の過去」▽「大田昌秀元知事は翁長は信用できない」▽「公用車廃止、自転車通勤の公約は反故に」▽「5月訪米計画も米政府は相手にせず」の4本柱で編まれ、保守政治家として辺野古移設推進の中心にいた翁長知事の変節ぶりを詳細に追っている。沖縄マスコミは報じないが、沖縄県議会議員時代、保守陣営で一緒だった筆者をはじめ、沖縄で政治に携わる者なら翁長知事のこうした言動はすでに「周知の事実」である。

 また、最新の5月28日号は、「翁長知事はタガが外れた」「沖縄県民も呆れる露骨な利権人事」と題して、県の代表的な外郭団体首脳人事を批判している。

 沖縄観光産業のリーダーである「沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)」の会長職に翁長知事の選挙対策副本部長で、最側近のホテル経営者が就任する。年間50億円の県予算を扱う団体の長に最も利害関係の強い企業の代表が就くわけだ。そのほかの外郭団体トップもオール選挙絡み人事。

 なぜそうなるのか、果たして許される経営人事なのか。公正、健全な運営ができるのか。政財界関係者のみならず、税金を払っている県民が等しく知りたい真実といえよう。だが、県民は沖縄ではなく、本土のメディアでしか真実を知ることができない。

 沖縄の新聞・電波メディアが県民の「知る権利」にこたえていないからだ。辺野古基地に反対さえすればなんでも「翁長サマ、サマ」と翁長県政を持ち上げる異様な紙面づくり。沖縄社会を欺き、牛耳るかのような「壟断(ろうだん)人事」について、解説記事のひとつでも書ける記者がいないのかと嘆いていたところ、沖縄タイムスがやっと、週刊文春の発売に遅れること数日後の28日付2面で「選挙功労?広がる波紋」と県外郭団体のトップ人事をフォローしてきた。内容は申し訳程度、極めて薄いが――。

 文春5月21日号は「沖縄メディアは事実を無視している」と在沖縄米軍海兵隊の前政務外交部次長ロバート・エルドリッヂ氏に焦点を当て、「オール沖縄」のウソや辺野古基地反対運動にからむ逮捕問題に言及している。印象に残った箇所を引用してこの稿を終える。

 「サイレントマジョリティー(もの言わぬ多数派)という言葉がありますが、沖縄では(基地反対運動の)活動家とそれを支えるメディア、その方向に沿ったコメントをする学者、そしてそれを選挙に利用する政治家の四者が一体となって、基地を容認する多くの人たちに、もの言えぬ状況を強いている」

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