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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)4月2日(木曜日)
通巻第4503号
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ニュアンスを逆につたえた日本と中国のメディア
ルー財務長官は北京で李克強首相と会見、何を言ったのか?
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ルー米財務長官が急遽、北京を訪問し3月30日に李克強首相と会見した。
ルー長官は「オバマ大統領」特使の資格である。
そして中国がすすめる「アジアインフラ投資銀行に参加表明した44ヶ国」について、「同盟国の参加に反対しないが、中国は既存の国債金融機関と協力すべきである」と述べた。
AP電に拠れば「AIIBが高い基準を維持し、運営されるべきであり、そのためにはIMF、世界銀行などとの協力が必要である」とルー財務長官が中国側に釘を刺した。
ところが、人民日報は「米国の参加を歓迎」としたため、日本のメディアは「米国も参加を検討か」と飛躍した分析をなし、ついでに日本も参加を検討しているというニュアンスで報道した。あべこべである。
IMF基準は加盟国85%の賛成で決定されるが、米国の出資比率が15%以上であり、拒否権を発動できる。IMFの基準は厳正克つ厳しく、融資相手国の経済政策にも介入できるため、嘗て韓国は救済されたが、ギリシアはたびたびのデフォルト、いまも揉め続けている。
中国がすすめるAIIBは細則も、拒否権に関してもまったく曖昧とされ、おそらくTPPが足かけ四年も交渉して、最終的な合意にほど遠いように、オバマ政権の元で成立しない可能性もでてきた。
であるとすれば、44ヶ国以上が参加する国際金融機関の合意が達成される頃には中国の外貨準備は底をついていることになるのではないのか?
それはともかくとしてルー財務長官は、中国へ乗り込んで米国側の懸念と懐疑を述べたのであり、日中のマスコミが伝えてこととは逆である。 中国投資銀、日米不在で“2流格付け”濃厚 資金調達に重大欠陥
2015.04.01
中国主導の投資銀行運営をめぐり、李克強首相(右)にクギを刺したルー米財務長官=30日、北京(共同)【拡大】
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加申請期限となる31日、安倍晋三首相は「焦って参加する必要はない」と述べ、参加表明を見送る方針を明らかにした。英独仏など欧州各国やロシア、オーストラリア、韓国を含む40カ国以上が参加を表明、慎重姿勢の日本と米国が孤立しているとの報道もあるが、実は困っているのは中国の方だ。日米不在のままでは資金調達に重大な欠陥を抱えたままのスタートとなり、中国が巨額損害を被る可能性があるというのだ。
安倍首相は31日、自民党外交部会の秋葉賢也部会長らと官邸で会い、AIIBの創設メンバーとして加わるための申請期限だった3月末までの参加表明について「焦って参加する必要はない」と述べた。慎重姿勢の米国と歩調を合わせたことで、首相は「米は日本が信頼できる国だと分かっただろう」と述べた。
麻生太郎財務相も同日の閣議後の記者会見で、AIIB参加に「極めて慎重な立場を取らざるを得ない」と見送る方針を明らかにした。麻生氏は日本が参加するための条件として「公平なガバナンス(統治)の確保や理事会による個別案件の承認」などを挙げ、現状では組織運営や融資の審査体制に不安が残るとの認識を示した。
岸田文雄外相も閣議後会見で「(ガバナンス面など)中国側に問題提起してきたが、明確な説明がない」と明かした。
米国は中国の影響力拡大を警戒してAIIBに懸念を示しており、設立にあたってはアジア開発銀行(ADB)や世界銀行をはじめとした国際金融機関と連携するようクギを刺したとみられる。 ルー氏は17日、米下院金融委員会の公聴会でAIIBについて「米国が主導する多国間制度に挑んでいる」と警戒感を示していた。
AIIBへの参加国は40カ国を超えるとみられ、形式上は日米が主導し、67カ国・地域が加盟するADBに迫る陣容のようにもみえるが、中身は似て非なるものだ。
AIIBは中国が資本の40~50%を出資し、本部が北京、中国人がトップを務めるとみられる。ADBは日本と米国の出資が10%台、総裁は日本人だが本部はフィリピンに置かれている。
そして、最大の問題は「融資案件を理事会で決定するという国際標準の仕組みがないこと。通常の国際金融機関ではありえない」と指摘するのは、嘉悦大教授の高橋洋一氏。
「中国のトップが、ある国へのインフラ投資を政治判断したら、AIIBはプロジェクトの採算性など度外視して融資することになりかねない。焦って参加したら、不良債権を押しつけられるだけになる恐れもある。また、日本にとって不都合な融資が行われることもありうる。AIIBが北朝鮮に融資すると決めた場合、どうするのか」 AIIBがこのまま発足しても大きな弱点を抱えるという。それが格付けの問題だ。開発銀行では、債券を発行するなどして融資のための資金を調達する。ADBの格付けは最高位のトリプルAのため、低い利回りで資金を集められる。
しかし、AIIBは事情が異なるという。高橋氏は「日米の参加なしでは、AIIBはトリプルAを取得するのは難しく、融資案件でADBに勝てない。資金調達コストが高くなり、中国の持ち出し分が増えることになる」とみる。
中国の資金も潤沢なようにみえて実はそうではないという。週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は警鐘を鳴らす。
「中国は、3兆8000億ドル(約455兆円)もの外貨準備があるとされるが、2020年までに2兆ドル(約240兆円)もの外貨が流出すると予測されており、基盤はきわめて脆弱(ぜいじゃく)だ。AIIB創設にあたり、日本の参加を執拗(しつよう)に求めたのも、大量の外貨流出リスクを、日本の加盟で補う戦略ではないか」
日本も創設メンバーとしてAIIB参加を急ぐべきだとの論調もあったが、前出の高橋氏は、日本は参加を焦る必要はないと語る。
「中国の金融システムは金利の自由化すら終了していない途上国並みの未熟なもので、国際金融業務のノウハウもない。いずれアジアで実績のある日本に水面下では協力を求めてくるはずだ。その時点で、理事会が実質的に関与できるかどうかを見極めてから参加しても遅くはない」 よろしかったら人気blogランキングへ クリックお願いします