「いま沖縄が危ない」とよく言われる。
中国が連日尖閣近海を侵犯している事実を見て、今日明日にでも中国が侵攻してくると危惧するむきもある。だが、わが国が尖閣を実効支配している現実や強固な日米安全保障体制、そして国際世論の動向を考慮すると中国侵攻が目前に迫っているとは考え難い。沖縄が直面する危機は、民主主義を内部から崩壊させようとする勢力が沖縄県内に、根強く存在するという現実である。
昨年10月の沖縄知事選を通して、沖縄を内部から蝕む本当の危機を検証してみる。民主主義の基本が言論の自由と公正な選挙にあるとすれば、昨年の知事選挙ほど新聞が報道の自由を盾に、公正な選挙を捻じ曲げ、民主主義を破壊した例を寡聞にして知らない。圧倒的占有率を誇る沖縄タイムス、琉球新報の沖縄2大紙は特定の候補を支援するがあまり有権者の判断の基礎となる情報を隠蔽したり、争点の文言を意図的に歪曲して有権者を誤誘導するなどで特定の候補者に肩入れをした。
沖縄2大紙は公正な選挙報道を自ら放棄し、自分の支援する候補者を当選させたのである。沖縄2大紙の「民意作り」は1昨年の「危険な欠陥機オスプレイの沖縄配備反対」を主張する東京抗議行動に始まる。オスプレイの沖縄配備は老朽化した旧型ヘリCH-46を新型ヘリのオスプレイMV-22への機種更新に過ぎない。 だが、沖縄2大紙はこの事実を歪曲し「オスプレイは欠陥機」というネガティブキャンペーンを張り、海兵隊は説明責任を果たしていないと批判してきた。しかし海兵隊がオスプレイの説明会や試乗会などの取材の機会を提供しても、取材拒否をするのは常にメディア側であった。通常取材される側の取材拒否はままあることが、沖縄メディアに限って言えば、メディア側がが取材拒否することは日常茶飯事である。つまり沖縄メディアにとって不都合な事実は取材拒否し、仮に取材しても「編集権」を盾に報道しない自由を選択する。
昨年11月の沖縄知事選で、仲井真弘多氏は落選の報道を知った瞬間、「マスコミにやられた」と呟いた。 仲井真氏は、自身が敗北した相手は対立候補の翁長氏ではなく、マスコミであると認識したのだ。仲井真氏が慨嘆するほど沖縄2大紙の仲井真氏に対する攻撃は常軌を逸していた。 知事選の熱気が覚めやらぬ11月20日、自民党は、沖縄知事選でマスコミに敗北した轍を避けるつもりなのか、衆院選期間中の報道の公平性確保に配慮する文書を在京テレビ各局に配布した。
要請文は、公平・公正な報道をしているメディアにとっては安倍首相が「何の痛痒もない」と断じるほど当たり前の内容だった。 ところが、何故か沖縄2大紙が激しく反発した。 琉球新報が11月30日付社説で「政権与党が報道番組の具体的な表現手法にまで立ち入って事細かに要請することは前代未聞だ。許し難い蛮行」と報道。沖縄タイムスは12月12日の記事で、「衆院選、報道現場で萎縮ムード ジャーナリストら危機訴え」と報じた。要請文には「過去にはあるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道」との記載があった。 これは1993年の総選挙でに当時の朝日報道局長の特定の政党に偏った発言が問題となった「椿事件」を指しているとみられる。 放送法によりテレビメディアは公正な報道をすべきと規制されている。テレビメディアが「椿事件」のように特定の政党に偏った報道をするのは放送法違反の疑いを抱かれても仕方がない。ところが要請文の配布先はテレビ局に限っており、新聞各社は要請の対象外のはずだ。 要請文の対象外の沖縄2大紙が激しく反発した理由は、直前の県知事選で「不公平・不公正な報道」をした自覚があるからに他ならない。
沖縄2大紙が翁長氏を支援するため行った数多くの「不公平・不公正な報道」の中から一件だけ紹介しよう。沖縄県知事選に出馬を予定している現職の仲井真知事を支援する県内の5市長は10月28日、那覇市内で会見を開き、同じく出馬予定の前那覇市長の翁長雄志氏対し、普天間飛行場の危険性除去の方法などについて問う公開質問状を発表した。翌9日の沖縄タイムスは南城市の古謝景春市長は、翁長氏が41市町村の代表が政府に提出した建白書をまとめる際に「反対することで振興策が多く取れる」、「さまざまな疑念がある」と語ったことは報道した。 だが沖縄タイムスと琉球新報は、同じ記者会見で中山義隆石垣市長が公開した確認書の存在についてはひと言も報道しなかった。 古謝南城市市長の「疑念」を裏付ける確認書には中山市長、2012年1月の「東京抗議行動」の実行委員会事務局長の玉城義和氏のほか当時那覇市長だった翁長雄志氏が立会人として署名押印した。中山市長は「翁長氏は選挙戦で、あたかも41市町村長全員が建白書に同意したかのように『オール沖縄』や『建白書の精神』と言っているが、それは最初から崩れている」と批判している。今回の知事選では2012年1月に翁長那覇市長率いる「東京抗議行動」で安倍首相に手渡した建白書の内容を支持するか否かが重要な争点となっていた。したがって有権者の判断の基になる建白書の内容が虚偽に満ちている事実を示す確認書の存在を沖縄2大紙が黙殺・隠蔽したことは新聞が有する編集権の範囲を大きく逸脱したある意味の「犯罪行為」と言われても仕方がない。ところが同じ県内紙の八重山日報と八重山毎日新聞が11月3日、4日と立て続けに確認書の存在を報道し、中山市長の建白書に対する疑義を公表した。八重山毎日新聞は次のように報じている。
「辺野古の県内移設断念 中山市長 建白書提出前に確認書」
オスプレイ配備に反対する県民大会実行委員会が昨年1月、普天間飛行場の県内移設断念も同時に求める全市町村長連名の建白書を作成する際、中山義隆市長は「県内移設の選択肢を否定するものではない」とする確認書を交わした上で署名していたことが分かった。中山市長は当時、辺野古移設について地元の理解を前提に選択肢としてあり得るとの立場を示しており、確認書はこれに基づくもの。中山市長は、建白書に「普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること」の文言が入っていたため、「私の考えに合わない」と拒否したが、再三の署名依頼に確認書を作成した上で署名した。確認書は「石垣市長中山義隆は米軍普天間基地の移設について原則、県外への移設を理想とするものの、普天間基地の早期移設と周辺住民への危険性の除去を最優先と考えており、県内移設の選択肢を否定するものではない」とする内容。また事前の文言調整を十分に行うことも求めている。確認書には中山市長、実行委員会事務局長の玉城義和氏、立会人として当時の県市長会会長で那覇市長の翁長雄志氏がそれぞれ署名押印。同年1月25日付で作成し、翁長氏らは同28日に安倍晋三首相に手渡している。
結局、沖縄2大紙は有権者の判断に大きな影響を及ぼす確認書の存在を黙殺したまま投票日を向かえ、翁長氏が当選した。10月28日の記者会見で確認書の存在が公表されたが、仮に沖縄2大紙が建白書の存在を報道する価値のない情報だと判断し、没記事にしたとしよう。だが選挙が終わって沖縄2大紙が契約する共同通信が確認書の存在を配信したが、年があけ1月の中旬になっても沖縄2紙は依然として確認書の存在について沈黙を守ったままである。 このように沖縄2大紙は自身が支援する翁長氏にとって「不都合な真実」は確信犯的に隠蔽した。これを犯罪と言わずになんと言おう。
仲井真知事は立候補表明前の3月、県議会で「(沖縄2紙は)特定の団体のコマーシャル・ペーパーだから購読しない」と言い放った。現役の県知事が記者団を前にして地元紙に対する不信感を露にしたことは前代未聞のことである。 県知事が激しい不信感を抱くほど沖縄2大紙は知事に敵意を剥き出しにしていた。知事退任後仲井真氏は「新聞の偏向も10対0の偏向では話にならない」と憤慨したという。新聞が言論の自由を盾に、公正たるべき選挙報道で捏造報道をするのが許されるのか。民主主義の基本となる選挙が、メディアの不公正な報道で左右されたら民主主義が崩壊するのはいうまでもない。 一方、民主主義が保障される社会だからここそ新聞は言論の自由を謳歌できる。 今回の沖縄知事選で、新聞の不公正な報道により「民意」が作られ選挙の結果に大きな影響を与える状況を目の当たりにした。新聞の重要な使命の一つに公正な選挙情報を有権者に伝える任務がある。新聞が民意を反映すことはあっても、新聞が民意を作ることは許されない。歯止めのない「言論の自由」が民主主義を破壊し、結果的に「言論の自由」をも奪う可能性があるからだ。圧倒的占有率で沖縄の言論界を支配し 「沖縄の民意は我々が作る」と豪語する沖縄2大紙が、捏造報道で「民意」を作っている現状こそ、沖縄が直面する本当の危機である。
追記:沖縄を危機に追い込む諸悪の根源ともいえる沖縄タイムスと琉球新報を法廷に引き釣りだし、鉄槌を加える目下有志を募って準備中である。全国の皆様のご支援を期待します。