その日の沖縄タイムスの一面トップは、翁長知事の出発を、まるで出征兵士を見送るような派手な見出しで飾っている。
見出しはこうだ。
■一面トップ
辺野古阻止、知事渡米
「当事者意識求める」
訪問団、アピールに意欲
■社会面トップ
訪米団「必ず成果」
拍手沸く空港「県民が付いている」
民意背に知事自信
出発しただけで、このバカ騒ぎだ!
☆ ついでに当時の当日記を一部引用しておく。 ☆ 翁長知事、きょう米国へ出発 辺野古計画見直し訴え、議員ら10人と面談2017年1月30日 05:45沖縄県の翁長雄志知事は名護市辺野古の新基地建設計画阻止を直接訴えるため、30日、米ワシントンに向け沖縄をたつ。トランプ新政権発足のタイミングに合わせ、米国内で辺野古反対の声を上げることで新基地建設に反対する県の主張を浸透させ、辺野古計画の見直しにつなげたい考えだ。
拡大する翁長知事
翁長知事が基地問題解決のためにワシントンを訪問するのは昨年5月以来で、就任後3回目。米上下院議員のほか、トランプ氏に近いシンクタンクの研究員や沖縄問題に詳しい大学教授ら約10人と会談する予定で、辺野古違法確認訴訟敗訴後も複数の知事権限を行使して辺野古新基地建設を阻止する考えを伝える。
国務、国防総省の幹部との会談も打診したが、マティス国防長官が2月3日から東京を訪問することもあり、日程的に調整が困難だという。
県は、設立を支援したジョージ・ワシントン大学の沖縄関連の図書をそろえた「沖縄コレクション」で、2日午後(日本時間3日未明)に基地問題に関するシンポジウムを開く。知事が基地問題、県参与の富川盛武氏が基地経済をテーマに講演する。
知事に合わせ、オール沖縄会議も米国を訪問し、知事や稲嶺進名護市長らと一部行動を共にする。知事らは31日にワシントン入りし、5日に帰沖する。
☆
翁長知事が訪米行脚で那覇空港を結果が事前から予測されたという点で、今回の「翁長・訪米団」ほど明々白々な例を筆者は寡聞にして知らない。
翁長知事の訪米前に菅官房長官、安倍首相、中谷防衛相と立て続けに政府首脳に面会したが、結果が予測されるという点では今回の知事の訪米と全く同じであった。
日本時間の30日、翁長知事はイゲ・ハワイ州知事と会談した。
本日(31日)の沖縄タイムスは、これをどのように伝えているか。
■一面トップ
海兵隊移転に一定の理解
イゲ・ハワイ知事 翁氏と会談
大爆笑で思わずコーヒーを吹いた。
安慶田副知事が先遣隊としてイゲ知事と面会した時と同じく「(辺野古移設は)国の問題」と答えたにも関わらず「一定に理解」とは驚きだ。
理解したとされる海兵隊移転も「日米両政府が決めれば、受け入れる」と条件付である。
さらに海兵隊移転は、辺野古移設が前提となっていることに、記事はひと言も触れていない。
そもそも鳴り物入りでやってきた翁長知事が、沖縄の米軍基地の状況を「情」をもって訴えたのにイゲ・州知事が「理解できない」などというはずはない。 「沖縄の状況は理解する」とは一種のリップサービス、それも一定の条件付である。
ハワイ・イゲ知事「国と国の問題」翁長知事と会談 沖縄タイムス 2015年5月30日 10:28【ホノルル29日=福元大輔】米ハワイ州を訪問中の翁長雄志知事は29日午前(日本時間30日午前)、祖父母が県出身の県系3世デービッド・イゲ州知事と、ホノルル市の州庁で会談した。非公開の会談後、翁長氏は記者団に対し、名護市辺野古の新基地建設について、イゲ氏は「国と国との問題。ワシントンでしっかり伝えてください」と答えたという。
翁長氏はイゲ氏の言葉にはなかったものの、「私の言っていることを同じウチナーンチュのルーツを持つ知事なので理解している表情だった。私が逆の立場でもそうしていた」と前向きに受け止めた。
アジア太平洋地域の海兵隊分散移転計画で、沖縄の海兵隊約2700人がハワイへ移転する計画があることに、イゲ氏は「日米両政府が決めれば、受け入れる準備がある」と理解を示したという。
☆
>イゲ氏は「国と国との問題。ワシントンでしっかり伝えてください」と答えたという。
イゲ氏の本音は「自分の国の政府を説得できずに、外国の知事に協力を求めても無駄なこと。ワシントンでも精々頑張って下さい」といったものだろう。(涙)
では琉球新報はどうか。
ハワイ移転2700人「協力して進めたい」 イゲ知事、翁長知事に表明 琉球新報 2015年5月30日 11:23イゲ氏は「沖縄の米軍基地の状況を紹介いただき感謝する」とした上で、「沖縄の米軍基地に関することは日米両政府が決める。(米側では)ワシントンが決めることになる」と述べ、州政府としては直接は関与できないとの考えを説明した。
>「沖縄の米軍基地に関することは日米両政府が決める。(米側では)ワシントンが決めることになる」と述べ、州政府としては直接は関与できない
取り付く島もない、とはこのことである。
本日の沖縄タイムスの見出しに戻ってみよう。
■二面トップ
翁長氏、「理」と「情」で訴え
ハワイ行動終了
反辺野古「理解得た」
来月3日米政府面談
国防総省 副次官補代行に格上げ
>翁長氏、「理」と「情」で訴え
あれ?翁長知事の訴えは「理」では勝ち目がないので、「上から目線」「高飛車」などと「情」に訴えるのが定番ではなかったのか
>反辺野古「理解得た」
どこが「理解得た」なのか。
負け犬の遠吠えではないのか。
これも一種の捏造報道である。
>来月3日米政府面談
>国防総省 副次官補代行に格上げ
当初アポなしだったのが30日になって国務省、国防総省ともに日本部長の対応でお茶を濁すつもりだったが、国防総省の副次官補代行が面会することになって「格上げ」と大はしゃぎの報道だ。
アポが取れたのは、国防長官はともかく、国防次官でもなく、国防次官補でもない。 さらに格下の副次官補で、おまけに「代行」が付いてくる。 こんな肩書き見たこともない。
翁長知事との面会のため急遽作った臨時のポストかと勘ぐりたくもなる。
米国務省は予定通り日本部長が面会するらしいが、面会する前からこの有様だ。
訪米の沖縄知事には国務、国防日本部長が対応 辺野古移設が「唯一の解決策」と国務省
【ワシントン=加納宏幸】米国務省のラスキー報道部長は28日の記者会見で、30日からワシントンを訪問する沖縄県の翁長雄志知事に同省のヤング日本部長が面会することを明らかにした。国防総省もウィンターニッツ日本部長が翁長氏に対応する。
翁長氏は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対しているが、ラスキー氏は移設計画の実現が普天間飛行場の固定化を避けるための「唯一の解決策」だと強調。計画通りに進める日米両政府の立場は揺るぎがないものであると述べた。
貧乏くじを引かされた日本部長は「辺野古移設が唯一の解決策」などとオウムのように繰り返すだけだろう。 お気の毒である。
沖縄タイムスの見出しに戻る。
■三面トップ
普天間「閉鎖は移設後」
米長官、防衛相に伝達
「力による変更」反対
南シナ海 防衛相、米豪とも一致
辺野古移設が普天間移設の代替機能を果たす基地の縮小統合である。
したがって、普天間の閉鎖は普天間移設後ということは小学生でもわかる理屈。
それがわからないのは「反辺野古」派の面々だけである。
>「力による変更」反対
>南シナ海 防衛相、米豪とも一致
翁長氏の一連の発言の中で欠けているは中国が東シナ海や南シナ海で行っている領海侵犯についてだ。
翁長氏の訪米と前後して中谷防衛相はシンガポールを訪問した。
中谷防衛相は日本時間の30日午前、各国の防衛相らが参加するアジア安全保障会議に出席し、演説を行った。
中谷大臣は、中国が南シナ海や東シナ海で海洋進出を強行している現状にについて、「極めて残念だが、今この瞬間も、南シナ海で大規模な埋め立てや滑走路の建設が急速に進められている。東シナ海でも現状変更を試みる動きがあり、日本を含め周辺諸国は不安を抱いている」と中国をけん制した。
本日の沖縄タイムスの社会面最下部にベタ記事でこんな見出しが。
尖閣周辺に 中国公船3隻
記事によると、中国当局の船が確認されるのは17日連続、とのこと。
【おまけ】
前回(2015年)の翁長知事の訪米行脚について筆者がオピニオン誌(ビューポイント」に寄稿した当時の記事を再掲する。
《 沖 縄 時 評 》 米側から事実上の門前払い/成果は地元紙“印象”報道
翁長雄志知事は5月27日、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する沖縄の「民意」を伝えるため、訪米行動の旅に沖縄を出発した。
見送りのため那覇空港に詰め掛けた市民らとガンバロー三唱で気勢を上げるかりゆしウエアの翁長雄志知事一行の姿は、訪米行動は出発前に既に成功したかのような印象を見る人に与えた。翌28日の沖縄タイムスには、「訪米団『必ず成果』」、「拍手沸く空港『県民が付いている』」、「民意背に知事自信」などの大見出しが乱舞、出発前から既に「勝利」を勝ち取ったかのような印象を与えた。
翁長知事は、出発前の5月20日、日本記者クラブでの記者会見で、「訪米の狙いは」との質問に対し、「日本政府を相手にしていたらどうにもならないので、米国に行く」(21日付東京新聞)と答えている。確かに菅義偉官房長官、安倍晋三首相、中谷元防衛相と立て続けに面会した際、翁長知事の主張と政府側の主張は100%対立。平行線のままで目下のところ「どうにもならない」状況である。
翁長氏の訪米に対して、外国人記者からも、「翁長氏が訪米してもあまり意味はない。良い戦略とは言えない」(21日付朝日新聞)という指摘もある。また「それ(訪米)よりも知事はなぜ安倍首相を説得しないのか」(同)という質問もあった。つまり翁長知事の説得する相手は「日本政府」だということである。日本国の一県知事である翁長知事が、日本政府を相手にしないで、米国を相手に一体何をするつもりか。そんな疑問を抱かせる翁長知事の訪米であった。
◆州知事は専権理解
結果が事前から予測されたという点で、今回の訪米ほど明々白々な例を筆者は寡聞にして知らない。翁長知事の訪米前に菅官房長官ら政府首脳と立て続けに政府首脳に面会したが、結果が予測されるという点では今回の知事の訪米とまったく同じであった。
日本時間の30日、翁長知事はイゲ・ハワイ州知事と会談した。翁長知事の反辺野古への協力要請に対し、安全保障事案は米国政府の専権事項と理解するイゲ知事は、「国と国との問題。ワシントンでしっかり伝えてください」と答えたという(30日付沖縄タイムス)。
翁長氏はイゲ氏の言葉にはなかったものの、「私の言っていることを同じウチナーンチュのルーツを持つ知事なので理解している表情だった。私が逆の立場でもそうしていた」と前向きに受け止めた(同)。さらに、沖縄の海兵隊約2700人がハワイへ移転する計画があることに、イゲ氏は「日米両政府が決めれば、受け入れる準備がある」と理解を示したという。
翁長知事は自分の都合のいいように解釈しているが、イゲ知事の前に面談した米上下院議員の対応と同じコメントであり、これは事実上の門前払いである。翁長知事の腹心の安慶田光男副知事が先遣隊としてイゲ知事と面会した時と同じく「(辺野古移設は)国の問題」と答えているにも関わらず「理解している(表情だった)」とは驚きだ。
理解したとされる海兵隊移転も「日米両政府が決めれば、受け入れる」と条件付きだが、それには辺野古移設が前提である。翁長知事の思い込みの激しい発言にも驚くが、それに疑問のコメントもつけずヒーローのように報じる沖縄タイムスにも言葉を失う。
同じ30日付琉球新報は、イゲ知事の発言を「沖縄の米軍基地に関することは日米両政府が決める。(米側では)ワシントンが決めることになる」と報じている。イゲ知事は、州政府としては直接は関与できないとの考えをしているのだ。「取り付く島もない」とはこのことである。勝手に推測させてもらうと、イゲ氏の本音は「自分の国の政府を説得できずに、外国の知事に協力を求めても無駄なこと。ワシントンでも精々頑張って下さい」といったものだろう。
翁長知事はハワイでの要請行動を終え、ワシントンに滞在、米政府担当者に会う予定。ワシントンで6月3日に国務省と国防総省の担当者と同時に会うことが決まったものだが、応対はヤング日本部長とアバクロンビー副次官補代理代行で、沖縄県側が希望していた次官補級より「格下」になった。
しかも、本丸のワシントンに向かう翁長知事の出鼻を挫(くじ)くかのように、米国務省のラスキー報道部長は5月28日の記者会見で、辺野古移設反対を訴えるため30日からワシントンを訪れる翁長知事に対し、同省ではヤング日本部長が辺野古への移設計画が「唯一の解決策だ」との見解を改めて伝えると予(あらかじ)め考えを示していた。それだけに翁長知事は、ワシントンでもさらに厳しい対応を強いられた。
◆扇動狙う印象操作
翁長知事が日米安全保障事案に関しては何の法的権限もないことは、知事本人は言うまでもなく沖縄2紙が知らぬはずはない。翁長知事は、明らかに政府の専権事項である安保事案に踏み込んだ言動を繰り返すものとみられる。もちろん米政府は、基地移転での交渉相手はあくまで「日本政府」との立場だが、問題は翁長氏が米政府関係者の不用意なリップサービスの言葉尻を捉え、それを沖縄2紙が針小棒大に報道する可能性が高いことだ。
翁長知事訪米の目的は米国側との論理的談判では分がないので、感情的プロパガンダ合戦で安倍政府を揺さぶる意図が明白だ。国防問題に関し、何の法的権限もない一県知事が、自国政府の頭越しにアメリカに交渉しようとする態度に危機感を感じるのは筆者だけではないはずだ。
だが、沖縄2紙や翁長知事が再三再四“恫喝(どうかつ)”するように、普天間飛行場の周辺で大事故が発生したり、辺野古で流血騒動が起きて死傷者が出たりしたら、メディアの中でも特に沖縄2紙の攻撃の矛先は一挙に政府与党に向く危険性がある。
これこそが扇動政治家・翁長知事が今回訪米する最大の目的である。安倍政府は舞台裏で翁長知事の意図を詳細にわたって米側に伝えておく必要がある。あるプロジェクトが成功か失敗かを判断するには、そのプロジェクトが完了してからすべきである。翁長知事の訪米要請行動は、使命途中半ばである。翁長知事は、本稿が掲載される日本時間の5日に帰国する。
翁長知事の留守中、沖縄2紙は、これまで沈黙を守ってきた翁長知事のアキレス腱といわれる那覇軍港移設問題でのダブルスタンダードや、「沖縄観光コンベンションビューロー」「県信用保証協会」「沖縄都市モノレール」など県の外郭団体の長に、平良朝敬・かりゆしグループ前会長ら知事選に功労のあった人物を起用したことを大きく批判している。だが翁長知事に同行した記者は、出発時の報道のように思い込みの激しい表現で、翁長知事の訪米行動を「成功」、少なくとも「有意義であった」などと持ち上げるだろう。
◆恥晒した権限誤解
本稿は翁長知事の帰国を待たず、結論を急ぐ。今回の翁長知事の「訪米行動は大失敗だった」と。
翁長知事の思い込みをはるかにしのぐほど、米国の要人や政治家は民主主義が何であるかを心得ていた。つまり州知事と州政府の安全保障に関する法的権限を厳しく峻別(しゅんべつ)していたということである。その点、外交・安全保障にかかわる地域の首長の法的権限を誤解し、夜郎自大な発言で、世界に恥を晒(さら)した翁長沖縄県知事とは雲泥の差である。
最後に付け加えると、出発前の記者会見で外人記者が発した「それ(訪米)よりも知事はなぜ安倍首相を説得しないのか」という質問の意味が理解できなかった翁長知事の責任を問うべきである。
(コラムニスト・江崎 孝)
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